【第84期順位戦】羽生善治九段 vs 鈴木大介九段を振り返る。中段玉を寄せる「厚み」の力

将棋 実践解説

こんにちは、kuronaです。

今回は、2026年2月4日に行われた第84期順位戦B級2組9回戦、羽生善治九段と鈴木大介九段の一戦を振り返ってみたいと思います。

先手は羽生九段、後手は鈴木九段です。戦型は、先手の居飛車穴熊を阻止しようと、三間飛車に構えた後手が積極的に仕掛けていく展開となりました。 それでは、私が特に気になった局面をいくつかピックアップして見ていきましょう。

          図は45手目▲7六金まで

第一感

6七にあった金が7六へと上がった局面です。 私は一瞬この手を見たとき、正直「よくわからない手だな」と思ってしまいました。金が玉の守りから離れてしまううえに、離れ駒(浮き駒)になってしまうからです。 わざわざ金が上がらなくても、仮にこの後△7五歩と突かれても▲同銀と取れるので、特に問題はないのではないかと考えました。

考えてみると

しかし、じっくり盤面を見つめ直すと印象が変わりました。 現在、後手からも駒が進んできており、玉頭戦になりそうな気配です。玉頭の戦いでは、何より「厚み」を作ることが大切になってきます。 そう考えてみると、この金上がりは局面を的確に捉えた素晴らしい一手だったのではないかと思うようになってきました。角の頭という弱点を守りつつ、全体に厚みを加える。まさに一石二鳥の手だったのですね。

          図は53手目▲6四角まで

図は、▲6四角と打った局面です。 私は最初、単純な飛車香両取りの手だと思いました。しかし、読み進めてみると、後手玉を不安定な位置に引っ張り出して寄せやすくしようという、深い意図がある一手だったのだと気づかされました。

この後、後手玉はどんどん狭い方へと追い詰められていくことになります。おそらく、あのまま6二に居れば、5一や7一といった安全地帯へ逃げ込まれて長い将棋になっていたかもしれません。「厚みがあるなら、中段に追った方が寄せやすい」という、羽生九段の優れた大局観に基づいた一着だったのではないでしょうか。

          図は83手目▲2一馬まで

図は、▲2一馬と桂馬を取った局面です。 ここからの羽生九段の寄せは、本当にお見事でした。 私であれば、つい手をこまねいて局面を複雑にしてしまいそうですが、羽生九段は粘りを許さないようにシンプルに寄せていきます。このあたりは流石の一言です。

桂跳ねや銀を取った手がそのまま詰めろになるなど、振り飛車側としては負けてしまって悔しいのですが、見ていて清々しさを覚えるような鮮やかさでした。私も、いつかこのような明快な寄せができるようになりたいものです。

今回の一局では、厚みの大切さが身に染みてわかりました。 「玉は下段に落とせ」とはよく言われますが、自陣に厚みさえしっかりしていれば、逆に中段へ追い出した方が寄せやすいこともあるのだと勉強になりました。

また、羽生九段の寄せのプロセスは非常に明快で、とても参考になりました。 一見、やみくもに王手をしているようにも見えましたが、実際には王手によって後手玉の形を制限し、確実に逃げ道を封じていたのですね。

「いつまでも攻めを迷うのではなく、王手をして形を決めるところは決める」という決断の重要性がよくわかりました。最後は後手玉の受けが難しくなり、先手玉に迫る手段もなくなったところで鈴木九段が投了。 終盤の入り口から出口まで、羽生九段の正確な指し回しが光った一局だったと思います。

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・図面作成:Shogipic

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